カテゴリー別アーカイブ: 米国

北朝鮮との対話はそんなに悪いことなのか? ②~日本が核ミサイルの射程に入った前提で考えよ

9月30日、北京を訪問中のティラーソン米国務長官が北朝鮮との交渉に意欲を示したところ、トランプ大統領が即座にツィッターで北朝鮮との交渉を「時間の無駄」と述べて否定。両者が役割分担しながら北朝鮮を揺さぶっているというよりも、大統領と外交安全保障を担当する政府高官の間で北朝鮮政策のズレが解消していないように見える。これに対し、日本政府は安倍晋三総理を筆頭に圧力しか言わない。北朝鮮への対応を論じるに当たっては、日本にとって何が最も大切な目標なのか、優先順位を明確にすることが肝要である。その際、ポイントは「北朝鮮が日本列島を射程に含む核ミサイルを既に配備している可能性が高い」という不愉快な現実を直視すること。わが国では何故か、この死活的に重要な論点が正面から議論されていない。 続きを読む 北朝鮮との対話はそんなに悪いことなのか? ②~日本が核ミサイルの射程に入った前提で考えよ

北朝鮮との対話はそんなに悪いことなのか? ①~対話に求めるもの

最近北朝鮮が目に余る暴挙を繰り返しているのを受け、「圧力」という二文字のみが幅をきかせ、「対話」は口にするのも憚られる風潮がみられる。北朝鮮相手に対話のみを言うのは論外。しかし、圧力のみで北朝鮮の核・ミサイル廃棄を実現するというのも非現実的な感情論であり、やり方を間違えると北の核・ミサイル開発を加速しかねない。一方で、対話には、北朝鮮の核・ミサイル開発を多少なりとも遅らせる、北朝鮮との間に意思疎通のチャンネルを作って危機管理に役立つなど、圧力には期待できない効果を見込める可能性がある。少し冷静になって、対話の意味を考えてみるべきだ。 続きを読む 北朝鮮との対話はそんなに悪いことなのか? ①~対話に求めるもの

北の核実験で米朝開戦は近づいているのか? ②~北朝鮮は挑発のつもりでも、米国は攻撃と受け止めるかもしれない

前回説明した基本線はそのままでよい。ただし、最近の北朝鮮の挑発行為はやはり度を越えている。同じ量の雨でも時間をかけて降れば何でもないものが、短時間に降れば堤防の決壊を招くこともある。北朝鮮の見せる「性急さ」「荒っぽさ」により、従来考えられなかった「開戦のリスク・シナリオ」の成立する余地が――まだそれほど大きなものではないが――多少なりとも出てきたのではないか? 注意しておくに越したことはない。 続きを読む 北の核実験で米朝開戦は近づいているのか? ②~北朝鮮は挑発のつもりでも、米国は攻撃と受け止めるかもしれない

北の核実験で米朝開戦は近づいているのか? ① ~「米国も北朝鮮も自ら相手を攻撃できない」状況は変わらず

9月3日、北朝鮮が六回目の核実験を実施した。朝鮮中央テレビはそれがICBM搭載用の水爆だったと主張している。トランプ政権が米本土に届くICBMと核実験をレッドラインと位置付けていたとも言われる中、緊張は激化するばかりだ。私の考えでは、「米朝が相戦う可能性は極めて低い」という従来の判断を変える必要はまだない。ただし、最近の北朝鮮の挑発行為は度を越している。それに伴って生じる新しいリスク・シナリオ――「北の挑発を米国が自国に対する攻撃と受け止め、自衛権行使として武力行使に訴える」――についても注意を喚起しておかなければならない。 続きを読む 北の核実験で米朝開戦は近づいているのか? ① ~「米国も北朝鮮も自ら相手を攻撃できない」状況は変わらず

敵基地攻撃論の薄っぺら⑤~除去不能でも制御可能な脅威

圧力をかけようとも、あるいは交渉をもちかけようとも、北朝鮮が核ミサイルを保有するのは時間の問題であろう。しかし、北朝鮮の脅威をゼロにすることはできなくても、それを制御していくことは十分に可能。北朝鮮の脅威に怯えて暮さなければならない、というような事態には決してならない。戦略的忍耐を持ち、地道な防衛努力と中長期的な対応を組み合わせる――。この平凡な答に我々は自信を持ってよい。 続きを読む 敵基地攻撃論の薄っぺら⑤~除去不能でも制御可能な脅威

敵基地攻撃論の薄っぺら④~「北朝鮮の脅威」の性格

ここまで見てきたところの結論は、敵基地攻撃能力保有は言うに及ばず、他の手段も含めて北朝鮮の核・ミサイル開発をやめさせる即効薬はない、というもの。しかし、諦めて何もしないのでは単なる敗北主義者と変わりがない。百点満点の答は存在しなくても、やるべきことはあるはずだ。ここで金正日やトランプ大統領の過激な言動の応酬から少し距離を置き、「北朝鮮の脅威とはどんなものなのか?」という原点に立ち戻るべき。道はそこから見えてくる。 続きを読む 敵基地攻撃論の薄っぺら④~「北朝鮮の脅威」の性格

敵基地攻撃論の薄っぺら③~他の選択肢はどうなのか?

今、注目を集めている敵基地攻撃能力保有論が政治家のパフォーマンスとも言うべき、浅はかな議論であることは前回までに語ったとおりである。だが、敵基地攻撃能力保有論を批判するだけでは「安全保障に無責任」という誹りを免れない。北朝鮮の脅威にどう対応すればよいのか? まずは敵規定攻撃能力保有論以外に考えられる選択肢を列挙し、それぞれについて検討する。 続きを読む 敵基地攻撃論の薄っぺら③~他の選択肢はどうなのか?

民主主義に対する新次元の脅威~米大統領選を乗っ取ったロシア

トランプ大統領を誕生させた昨年の米大統領選。これにロシアがサイバー攻撃を使って干渉していた。極めつけの主権侵害であり、形を変えた侵略とも呼ぶべき卑劣な行為だ。今やサイバー攻撃は、民主主義の根幹である選挙を標的とし、条件によっては特的候補の当落を左右するほどの可能性を持つに至った。しかし、この新次元の脅威に対して我々日本人はあまりに無頓着、無防備である。 続きを読む 民主主義に対する新次元の脅威~米大統領選を乗っ取ったロシア

日米同盟と尖閣⑥~有事に米国はどう動くのか?

前回、前々回を通じ、米国にとっての日本と中国、日米安保条約の解釈の幅、フォークランド紛争で見せた米国政府の対応を概観した。これらを踏まえながら、将来尖閣諸島をめぐって日中が衝突した場合の米国の対応について私の観察と予測をやや大胆に述べ、本シリーズをとりあえず終わりにする。 続きを読む 日米同盟と尖閣⑥~有事に米国はどう動くのか?

日米同盟と尖閣⑤~フォークランド紛争と尖閣有事

尖閣有事における米国の出方を予測するに当たり、「米国政府にとって重要な国同士が絶海の孤島をめぐる領土問題で軍事紛争に至った」という意味で参考になる歴史的事例がある。1982年に英国とアルゼンチンの間で起きたフォークランド紛争だ。フォークランド紛争の際の米国の対応を振り返ることによって、尖閣有事が起きれば米国はいかに動くか(動かないか)、もう少し深読みしてみよう。 続きを読む 日米同盟と尖閣⑤~フォークランド紛争と尖閣有事