カテゴリー別アーカイブ: 米国

米朝軍事衝突と安保法制 ~ 対岸の火事ではない

北朝鮮と米国がチキン・ゲームを繰り広げている。北朝鮮による挑発行動は今に始まったことではない。一方、トランプ政権も軍事オプションを前面に出すことで北朝鮮(と中国)に圧力をかけることが北の挑発的行動を抑制するのに有効と考えているか、それを試しているように見える。要人の発言からマスコミへのリーク、アフガニスタンにおける新型爆弾使用のデモンストレーションなど、あの手この手で緊張を煽り立てている。 続きを読む 米朝軍事衝突と安保法制 ~ 対岸の火事ではない

日米同盟と尖閣④~安保条約と尖閣有事

海保と海警、または自衛隊と中国軍が尖閣諸島を巡って衝突する事態は、起こらない確率の方が高いと思う反面、潜在的にはいつ起きても不思議ではない。その時、米国はどう行動するのであろうか? 米軍が自衛隊と一緒になって中国軍と戦ってくれるのはむしろレア・ケースかもしれない。 続きを読む 日米同盟と尖閣④~安保条約と尖閣有事

日米同盟と尖閣① ~2016年8月5日の衝撃

今日、我が国の安全保障にとって最大の懸念事項は中国の動向である。中国に対し、日米同盟が死活的な重要性を持つことは言うまでもない。だが同時に、「日米同盟があれば安心だ」と胸を撫で下ろすのは、呑気を通り越して間抜けと言うべきである。 続きを読む 日米同盟と尖閣① ~2016年8月5日の衝撃

アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション⑤~アメリカ・ファーストが軍事オプションの背中を押す?

もう一つは、トランプ政権特有の「アメリカ・ファースト」の色眼鏡を通して見た時、これまでに説明したような、対北軍事オプションを実行した場合の問題点がクリアされてしまう可能性がある、ということだ。端的に言えば、同盟国である韓国や日本に被害が出ようとも、米本土を核の脅威から守ることを優先すべき、という発想である。 続きを読む アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション⑤~アメリカ・ファーストが軍事オプションの背中を押す?

アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション④~トランプ政権と重なる北朝鮮攻撃の「最後の機会」

 北朝鮮による核・ミサイルの開発・配備をやめさせようとし軍事オプションを検討すれば、米辱政府は以上のような厳しい現実に必ず直面する。トランプ政権になってもそのあたりの事情は何一つ変わらない。常識的に考えれば、トランプ大統領もこれまでの大統領と同じく、軍事オプションには踏み切れないだろう。だがこの政権については、北朝鮮の突きつける現実を過去の政権とは違ったレンズを通して眺めることになるかもしれない、という要素を考える必要がある。 続きを読む アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション④~トランプ政権と重なる北朝鮮攻撃の「最後の機会」

アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション③~どこを攻撃するというのか?

米国が軍事オプションを控える中、北朝鮮は核・ミサイル開発を営々と続けてきた。その結果、北朝鮮のミサイル能力は米国が先制攻撃するには「進化しすぎた段階」に入り、米国が軍事オプションに踏み切る際のハードルを一段と引き上げている。 続きを読む アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション③~どこを攻撃するというのか?

アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション②~ソウルを「人質」にとられている

北朝鮮の核開発を止めるための軍事オプションを検討するのはトランプ政権が初めてではない。1994年、北朝鮮は寧辺にある原子炉から核燃料棒を取り出して核兵器開発を大きく進めようとしていた。これに対し、クリントン政権は北朝鮮の核施設に対する軍事攻撃を真剣に検討した。 続きを読む アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション②~ソウルを「人質」にとられている

アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション①~北朝鮮攻撃の誘惑

 トランプ政権は現在、北朝鮮政策の見直し作業を行っており、そこでは軍事オプションも検討の俎上に乗っているという。従来の常識で考えれば、米国政府が軍事オプションを採用することはありえない。しかし、トランプが「アメリカ・ファースト」の理念に心底忠実であれば、北朝鮮の核施設等に対する先制攻撃オプションが現実のものとなる可能性も(極めて困難な決定だが)完全にゼロではない。その場合、日本も人的・物的な被害を受けるとともに、先の大戦以降初めてとなる「戦争」に踏み切ることも覚悟しなければならなくなる。 続きを読む アメリカ・ファーストと対北朝鮮軍事オプション①~北朝鮮攻撃の誘惑

トランプの「過激な不確実性」は思った以上に根が深い

前回、トランプ大統領が、価値観、国際秩序、統治能力という3つのレベルで「過激な不確実性」をもたらすだろうと述べた。だが、トランプ政権下の「過激な不確実性」がいかに深刻な問題かを理解するため、以下の2点を補論として追加させてほしい。

第一は、トランプ政権下で上述の3つの不確実性は相互に干渉しあい、過激さを増す可能性があるということだ。 続きを読む トランプの「過激な不確実性」は思った以上に根が深い

トランプ大統領が開く       「過激な不確実性」の時代     ~ドナルド・トランプが     我々を不安にする三つの理由  

元来は経済学の用語なのだろうか、過去に前例がなく予測のつかない状態のことを「過激な不確実性(Radical Uncertainty)」と呼ぶらしい。(「根本的な不確実性」という邦訳も見かけたが本稿では敢えてこう訳しておく。)国際政治の世界でも、ドナルド・トランプ大統領の誕生によって「過激な不確実性」の時代が始まったという見方が出ている。8年前、「チェンジ」を標榜してバラク・オバマ大統領が登場した時、オバマのめざす変化は大体想像がついた。だが今、トランプ大統領という降ってわいた現実に直面し、世界中の多くの人々が「従来の物差しで世界の将来を見通せなくなったのではないか」という不安を抱き始めている。                   トランプのもたらす「過激な不確実性」とは何なのか。1月20日の大統領就任から一か月以上たったこの時点で一旦整理しておこう。 続きを読む トランプ大統領が開く       「過激な不確実性」の時代     ~ドナルド・トランプが     我々を不安にする三つの理由