一見、もっともらしく聞こえる敵基地攻撃能力保有論。しかし、実際問題として検討してみると、その有用性の低さに驚く。日本も核武装して北朝鮮のような国になるのでない限り、敵基地攻撃能力を新たに保有するメリットはほとんど気持ちの問題、というのが偽らざる感想だ。
敵基地攻撃能力保有論の薄っぺら①~なぜ、敵基地攻撃なのか?
昨今、北朝鮮に対する敵基地攻撃能力保有論なるものが安全保障の専門家と称する国会議員の先生方から(以前にも増して)聞こえてくるようになった。だが、私の率直な感想は「もう少し真面目に考えてくれよな」というものである。3回のシリーズに分け、敵基地攻撃能力保有論の背景、実際上の問題点、その他の議論(イージス・アショアやTHAADの配備)について論点を整理してみる。 続きを読む 敵基地攻撃能力保有論の薄っぺら①~なぜ、敵基地攻撃なのか?
民主主義に対する新次元の脅威~米大統領選を乗っ取ったロシア
トランプ大統領を誕生させた昨年の米大統領選。これにロシアがサイバー攻撃を使って干渉していた。極めつけの主権侵害であり、形を変えた侵略とも呼ぶべき卑劣な行為だ。今やサイバー攻撃は、民主主義の根幹である選挙を標的とし、条件によっては特的候補の当落を左右するほどの可能性を持つに至った。しかし、この新次元の脅威に対して我々日本人はあまりに無頓着、無防備である。 続きを読む 民主主義に対する新次元の脅威~米大統領選を乗っ取ったロシア
シビリアン・コントロールは大丈夫か? ~河野統幕長の「改憲ありがたい」発言と南スーダン日報問題
二十年以上にわたる防衛省・自衛隊の人たちとの付き合いの中で、私は自衛隊のシビリアン・コントロール意識の高さに厚い信頼を寄せてきた。だが最近、自衛隊の持っていた謙虚さと言うのだろうか、戦後営々と築き上げた「民主的統制の文化」が希薄化しているのではないかと感じることが増えている。自衛隊の活動を評価することと、自衛隊に甘い態度を取ることは別次元の問題だ。我々はここらでシビリアン・コントロールのタガを締め直すべき時に来ているのではないか。現に安倍総理が「戦後レジームの解体」を目指している今、戦前に戻るわけがない、と高を括ってはならない。 続きを読む シビリアン・コントロールは大丈夫か? ~河野統幕長の「改憲ありがたい」発言と南スーダン日報問題
日米同盟と尖閣⑥~有事に米国はどう動くのか?
前回、前々回を通じ、米国にとっての日本と中国、日米安保条約の解釈の幅、フォークランド紛争で見せた米国政府の対応を概観した。これらを踏まえながら、将来尖閣諸島をめぐって日中が衝突した場合の米国の対応について私の観察と予測をやや大胆に述べ、本シリーズをとりあえず終わりにする。 続きを読む 日米同盟と尖閣⑥~有事に米国はどう動くのか?
日米同盟と尖閣⑤~フォークランド紛争と尖閣有事
尖閣有事における米国の出方を予測するに当たり、「米国政府にとって重要な国同士が絶海の孤島をめぐる領土問題で軍事紛争に至った」という意味で参考になる歴史的事例がある。1982年に英国とアルゼンチンの間で起きたフォークランド紛争だ。フォークランド紛争の際の米国の対応を振り返ることによって、尖閣有事が起きれば米国はいかに動くか(動かないか)、もう少し深読みしてみよう。 続きを読む 日米同盟と尖閣⑤~フォークランド紛争と尖閣有事
米朝軍事衝突と安保法制 ~ 対岸の火事ではない
北朝鮮と米国がチキン・ゲームを繰り広げている。北朝鮮による挑発行動は今に始まったことではない。一方、トランプ政権も軍事オプションを前面に出すことで北朝鮮(と中国)に圧力をかけることが北の挑発的行動を抑制するのに有効と考えているか、それを試しているように見える。要人の発言からマスコミへのリーク、アフガニスタンにおける新型爆弾使用のデモンストレーションなど、あの手この手で緊張を煽り立てている。 続きを読む 米朝軍事衝突と安保法制 ~ 対岸の火事ではない
日米同盟と尖閣④~安保条約と尖閣有事
海保と海警、または自衛隊と中国軍が尖閣諸島を巡って衝突する事態は、起こらない確率の方が高いと思う反面、潜在的にはいつ起きても不思議ではない。その時、米国はどう行動するのであろうか? 米軍が自衛隊と一緒になって中国軍と戦ってくれるのはむしろレア・ケースかもしれない。 続きを読む 日米同盟と尖閣④~安保条約と尖閣有事
日米同盟と尖閣③~日中衝突の可能性は確かにある
強硬路線の結果、日中が軍事衝突すれば、両国にとってそのマイナスは明らか。常識的に考えれば、日中双方の指導者が衝突を紛争へ、戦争へとエスカレートさせる可能性は限りなくゼロに近いはずである。だが今や、エスカレーションはない、と完全に安心していられる状況にはない。 続きを読む 日米同盟と尖閣③~日中衝突の可能性は確かにある
日米同盟と尖閣②~実効支配をめぐる攻防
中国側は一貫して、船舶数、トン数、火力のすべての面で海警、漁政や人民解放軍の艦船を増強してきた。これに対抗するため、日本側も近年――特に2010年9月の中国漁船侵入事件以降は――、海保や海上自衛隊の能力と態勢の強化に努めるようになった。中国の動きが止まらない以上、日本政府は今後も対応を続けることになる。 続きを読む 日米同盟と尖閣②~実効支配をめぐる攻防